新しいりん光発光錯体の開発

―りん光発光性Pd錯体の合成―


 有機分子の励起状態には一重項励起状態と三重項励起状態の2つの状態が存在し、一重項励起状態からの発光を蛍光、三重項励起状態からの発光をリン光と呼びます。それらの生成割合は
1:3であることから、リン光を活用することによって有機EL素子の変換効率の向上が期待されます。そのため、近年、新しいリン光発光材料の開発を目指した研究が盛んに進められています。

 


私たちは、チオアミドやホスフィンスルフィド基を有する新しいタイプのピンサー型金属錯体の構築と機能開発を進めています(参考)。これらの研究において、最近、りん光発光性を有する新しいパラジウム錯体を調製しました。

  

得られたパラジウム錯体からは固体結晶状態で赤色のりん光発光が観測できます。また、これらの錯体を発光材料とするEL素子からも同色の発光が観測できます。


Pd錯体の発光スペクトルの例

 パラジウム錯体は一般に同族列の白金錯体に比べて無輻射失活を起こしやすく、室温付近での発光はあまり見られないことから、興味深い素材といえます。

 今後は、さらに配位子の分子設計を進め、発光色の制御や発光効率に優れたりん光発光錯体の構築が期待されます。


研究内容

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